日本ではそれほどですが、本国アメリカでは超人気ドラマの『THIS IS US』。そのドラマにシルベスター・スタローンがスタローン本人役として出演しています。
このスタローンのカメオ出演がとても感動するんです。スライファンなら思わず泣いちゃうくらいの濃密な展開なんです。『THIS IS US』はもともと泣けるドラマなんですが、まさかのスライとの相性も良いドラマでした。
スライの役どころはこうです。
主人公のひとりケヴィンはシットコムで人気を博した人気俳優でハリウッドの大作戦争映画で新たなチャレンジをしています。その作品にシルベスター・スタローンが出ています。ケヴィンの役どころは、上官のスタローンを父と慕うくらい尊敬してる兵士で、その上官の命を救う役です。
「俺がスタローンを救う役をやるなんて」
とケヴィンが言うと、撮影現場に見学に来ていた双子の妹のケイトも、今は亡き父親が大ファンだったスタローンと兄が共演することを喜びます。
この今は亡き父親。俳優名はマイロ・ヴァンティミリア。『ロッキー・ザ・ファイナル』や『クリード 』シリーズでロッキーの息子役をやっている俳優なんです。
マイロは今でもスタローンと仲が良いとのこと。今回のキャスティングもマイロの口利きで実現したらしいです。
ロッキーファンならこの粋なカメオ出演に興奮すること間違いなしです。演じてるスライが「なんで水に果物を入れるんだ? まるで沼の水のようだ。昔は水はただの水だったのに」という風にロッキー風味な演技なのも嬉しいです。
ケイトはいかに亡き父がスタローンのファンだったことをスタローン本人に話します。そしてその流れでケイトの人生相談を受けるスライ(ロッキーのようにナイスガイです)。
歌手になりたいケイトですが、もう若くないと嘆きます。
「人がどう思うか関係ない。本当だ。誰も俺が『ロッキー』を3日で書くとは信じなかったし主演なんてムリだと言われてた」とスライは自身の経験を語りケイトを元気づけます。
「Mr.スタローンでなくて、スライと読んでくれ」
「君が新しいエイドリアンだ」とケイトに出血大サービスのスライ。
そこにケヴィンが現れます。
「父親は誇りに思ってる。失ったのは辛いだろうがね」とケヴィンに言うスライ。
「もう昔のことですから」とケヴィン。ケヴィンは父親の死からまだ立ち直れずにいるのでこの話をはぐらかそうとします。
そのことを知らないスライは言います。
「時間の流れってのは面白いものだ。『ロッキー』のテーマを妹さんが口ずさんだ途端ーーリングの匂いがしてきた。子供の頃俺の映画をよく見たと聞いて、うちの子の幼い頃を思い出した。寝癖の髪に揃いのパジャマ。鮮明に浮かんできた。手を伸ばせば触れそうなくらいね。
経験から言えば“昔のこと”など存在しない。大切な記憶かそうでないかってだけだ。お父さんに捧げよう」
ここでスライファンなら、ちょっとやばいはずです。
スライは何人か子供がいますが、思い出してる子供のひとりは、若くして死んでしまったセイジ・スタローンなのではないか?と想像します。父親の死を受け入れることがでないケヴィンに対し、現実に子供を失っているスライが、今はもういない子供のことを、今も触れそうなくらいリアルに想像して、ケヴィンに語りかけているこのシーン。
ここにスライの映画人としての凄みを感じざる得ません。スライは人生を投影するタイプの俳優です(スター俳優は多かれ少なかれそうかもしれません)。単なるファンサービスのカメオ出演でも、その人生観を投影するスライの作家魂。
そして粋なのは、ロッキーの息子役とはこのドラマで共演することはありませんが、それ故に息子役の俳優の存在感が増し、その想像させる力が感動を呼びます。脚本もかなりのクオリティです。
ちなみに、このスライが主演する前の回に、ロッキーの息子役のドラマでは父親のマイロは、ボクシンググローブをつけてサンドバックを叩くシーンがあるんです。
さりげない予告により感動します。
個人的な経験なんですが、私がこのスタローン出演の回を見た日が『ランボー最後の戦場』を見た日なんです。しかもその日はスタローンの誕生日。その偶然がさらに私を感動させます。
今回言いたいことはそれくらいです。