痺れました。
知人に強烈に勧められたので、すぐ見に行きましたが、なるほど勧めたくなる気持ちを理解しました。
マッツ最高の演技
なんといってもこの映画は、マッツ・ミケルセンの演技を抜きには語らないでしょう。
いつもながら、マッツの風貌が異様です。イカつい身体付きに人殺しのような顔(007カジノロワイヤルでは裸にして椅子に縛りつけたダニエル・クレイグの股間を集中的に痛めてつけていた拷問をする悪者演じるマッツが記憶に新しいです)。そこにサラサラヘアのアンバランスさが、印象的です。
そんなマッツが引っ込み思案な歴史の先生を演じます。生徒からの人気はなく生徒の親から呼び出されてレベルの低い授業をなんとかしてほしいと言われる始末。
控えめな性格を酒を飲んでパフォーマンスをあげよう、という無謀な施策を、仲間四人で打つことになります。
実際酒を飲むと、ギンギンになり塾の人気講師ばりに教室を回りまくるマッツ。その変貌前と後を、マッツが繊細かつ大胆な演技で表現しています。
ものすごいリアリティ
マッツ含む四人の中年なかまたち。揃いも揃って酒の力を借りて、仕事のパフォーマンスを上げようとします。
もうね、いちいち不穏な空気を漂わせてるわけですよ。冒頭、仲間の誕生日を酒飲んで祝うシーンから、なんか心配。
ものすごいリアリティがありますね。舞台のデンマークのことなんか何も知らないけど、この国はアルコールが社会的に問題になってるんだろうな、と思わせるシーンが多く、そこには説明はひとつもなく、登場人物の振る舞いだけで、それとなく観客にわかるようにしてる、この語り口のうまさに、あっという間に物語に入ることができます。
酒飲みの自分と重ねる怖さ
「今日は運転あるから」、
「家族との時間を大切にしたい」、
酒が原因で死んだ友人の葬式、
離婚寸前の嫁から大切なメール、
これらの状況で、マッツは全部飲んでますwww
タイトルの「アナザーラウンド」は英語で「もう一杯」という意味があります。ホントその通りな映画ですよね。
「おい!!」って思わず言いたくなりますが、これがアルコールの怖いところです。
「飲まない」と思っても飲んでしまうんです。なぜなら、アルコールはドラッグだから自制心を効かせることが難しいんです。依存してしまうんです。
アルコール、合法なだけでドラッグですよね。どこでも誰でも簡単に買えて簡単に効くドラッグです。
「今日は飲まない」と思っても飲んでしまうこと、私もよくあります。私も酒を飲む方なので、見てる最中は「マッツよ、お前は俺なのか!?」って何回も思いました。
酒飲みだけに、この映画から私自身が感じるリアリティはハンパなかったです。夜な夜な飲み歩いてる自分を重ねて見てました。、
重層的なテーマ
じゃあ、この映画アルコールの怖さを伝えたい映画なの?っていうと、どうもそれだけでは無さそうです。
弱い人間たちへの応援歌のような暖かい視点も、ちょいちょい入れてくるんですよ。「アルコール飲んでるダメ人間が!」っていうことでもないと思います。
人生思うようにいかないけど、それでも生きていくんだもんな。いろいろあるよな。っていうある意味悟りの境地からの優しい視点も感じる作品でした。
その悲しさや喜び、どうしようもなさ、いろいろ複雑な心境が爆発するラストシーンのマッツのあの演技は最高でした。
苦い人生も経験した大人のための一本でした。
ちなみにこの映画、ディカプリオ主演でリメイクが決まっているとか。レオ様好きですけど、見たいかと言われると微妙ではありますね。いやたぶん見ますけどね。うん、なんかこれはこれでリメイクしなくても良いじゃないかしら…。
今回言いたいことはこのくらいです。