人って見たくない物あるじゃないですか。犬の糞とかゴキブリとか、そういうの。
できれば、そういう物は極力目に入らないように過ごしてるわけです。怖いこともそうです。高い所に行かないとか注射されるときに刺さる所を見ないとか。例え想像したとしてもね。
で、ホラー映画とかって、そういう感情をあえて楽しむっていう、すごい高度な生き物の楽しみ方なんですよ。
で、『ミッドサマー』です。
なんつう映画を作るんだ、アリ・アスター監督は。こいつすげえ嫌な所ついてくるんですよ。前作『ヘレディタリー / 継承』で認識したはずなんですよ。でもね、今回の『ミッドサマー』の嫌なところはすっごいたくさんあって、終始戦慄しながら見てました。
嫌味1. 明るくて綺麗
ホラーって基本暗いじゃないですか。その暗さを利用して、我々の想像力を掻き立て怖がらせる。『ミッドサマー』は逆です。明るい。ひたすら明るい。この明るさの中に狂気をずっと感じながら見るという(嬉しい)苦行を強いられます。ギンギンに明るいから、こっちの感覚も狂ってくるんですよ。なんなら花もたくさんあって綺麗なんです。それが不気味。
嫌味2. 見たくない物をきっちり映す
見たくないものをきっちり描写するのも『ミッドサマー』の魅力です。例えば人の顔が潰れる瞬間。普通ここはカメラを外しますよ。でも『ミッドサマー』は違います。そんな逃げの演出はしません。潰れる瞬間をちゃんと映し、潰れた後もやはりちゃんと映します。
嫌味3. 幻想的かつ没個性のキモさ
欧州の訳のわからない気持ち悪い謎コミューンを具現化したこの映画。幻想的に描きます。お花畑でみんな同じような白い服をきて、同じような思考をして、コミューンは笑いが絶えないけど、その笑いがキモい。没個性。ああいうのをみると、多様化って素晴らしいのね、ってつくづく思います。また作中に出てくる恋愛物語のイラストもすっげえキモい。思わず「何それ?」って言ってします。
嫌味4. いつの間にかな展開
はじめは、「まあちょっと変だけど、なんだかんだ大丈夫だろう」って思うんですよ、登場人物たちや俺たちも。でもね、ある一線を超えたある出来事を目撃した後も、登場人物たちは「でも大丈夫だろう、自分たちは」的な気持ちがある。俺たち見てる側は、もうハッキリダメだろう、ってわかるんだけど。でももし自分があの中にいたら「理解しなきゃ、こういうカルチャーもあるんだよ」って思っちゃう物なのかな、と怖くなります。いつの間にかズブズブな感じ、このいつの間にかの匙加減が一番怖い。では、一体いつ引き返せばよかったのか? それは最初からなんですけどね(笑)。
いやあー、楽しみました、『ミッドサマー』。これは傑作ホラーですよ。欧州のカルト宗教とか神話、『進撃の巨人』(ある共通する名前が出てくるんです)なども調べてから改めて見るとまた違う面白さがありそうです。
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