私は70年代生まれ。その世代の映画好きにとって、タランティーノは特別な存在の映画監督です。そんなタランティーノの映画「パルプフィクション」を映画館で初めてみた。

自分の場合は、東映まんがまつりやガンダムなどのアニメ映画を経て、ジャッキーチェンで決定的に映画好きになりました。
ジャッキーのカンフーや、超絶スタントにプラスされたコメディセンス。ジャッキーは確実に天下を取っていた時期がありました。香港だけど、日本の国民的な人気が確かにあったんです。
しかし人気のピークがあれば、その翳りも確実にあります。「ジャッキーはダサい」という風潮が発生したのです。
なぜか?
スタローンやシュワ、そしてスピルバーグに代表されるキラキラしたブロックバスター的黄金の80年代ハリウッド映画。
アメリカです。アメリカの輝きに対してジャッキーチェンはあまりにアジア的、日本人に身近すぎた。当時の子供からすると、アメリカなんて国はフィクションに近い存在でした。アメリカどころか同級生でパスポート持ってるやつなんか知らないし、もちろん両親だって持っていません(両親はいまだに持ってないし、ひとりは持たぬまま死にました)。
80年代のアメリカはほとんど架空の国に近かった気がします。映画の中の宅配ピザや高校生が車を運転。着古したジーンズにスニーカーとカットオフして袖のないTシャツやジージャン。家に入る時靴を脱がないし、なんならベッドまで土足です。とにかくイカしてるんですよ。そういうカルチャーを知った小学生の頃の幼馴染から「ジャッキーはダサい」と。ショックでした。私はジャッキー映画を愛していましたから。そう言われてからもスパルタンXから高校3年卒業まで、全てのジャッキー映画を劇場に行ってました。
しかし私は中学生になる頃にはジャッキーラブは隠すようになりました。スタローンやシュワはOK。アメリカだし。トムクルーズとチャーリーシーンという若手スターも小学校高学年から台頭してきて、おしゃれ、あるいは「モテ」を意識した俳優に興味を持ち始めました。リバーフェニックスはそんな若手映画スターの象徴のような俳優で、リバーフェニックスを思うと今でもなんとも言えない気持ちになります(今思い返してみると、トムクルーズだろうが、リバーフェニックスだろうが、映画好きという男子はあまりモテなさそうで、モテたいならもっと別の方向性で勝負するべきだったかもしれません)。
ちなみに、高校生くらいになると、まずスタローンが、そしてそれから少し遅れてシュワが恥ずかしい存在に成り下がってしまいました。シュワは「ターミネーター2」のヒットや、日本のCMに出まくってお茶の間の人気者になってはいましたが、若者たちの流行とは恐ろしいものです。スタローンもシュワもあのマッチョ感が災いしたのでしょう。ガチムチは敬遠される時代に突入したのです。
私は隠れジャッキー信者であると同時にスタローンもこよなく愛しており、シュワだってまあまあ大好きでしたから。この流れは辛い流れでした。世間がダサいというものに対して、ティーンネイジャーの自分は胸を張って「好きだ!」と言える胆力は持ってませんでした。言えないお前がダサいよ、とあの頃の自分に言ってあげたいのです。
前後はするもののそういう時代を経て、高校生や大学生の私は、社会派オリバーストーン監督のファンを公言しつつ、それに出演する俳優であるトムクルーズやチャーリーシーンなどの俳優も、そういう文脈で好きになっていきました。つまらない男と思うかもしれませんが、当時ジャーナリストに憧れていた自分にとって、あれはあれで自分の中では筋を通していたと思います。
また大学生になると、映画よりも友人たちとの付き合いをより重視するようになり、映画はその付き合いの一環くらいのコンテンツになっていました。
そんな中、親しい映画好きの友人があるVHSを入手して一緒に見た映画。
それがタランティーノの「レザボアドッグス」と「パルプフィクション」だった。初めて見たときの感想は「ん? こういうの面白いのか?」という感じで、実は衝撃とかはなかった。ジャッキーやスタローンやシュワのアクション出身の自分からすると、普通の人間同士の話はなんとなく退屈な感じもしなくもないと感じた。
しかし明らかに新しい感じがしたし、何よりその映像や音楽のスタイリッシュさも、若者の自分にとって刺さるものがあった。その後「トゥルーロマンス 」を見て、決定的にタランティーノ(この映画は脚本で監督してないけど)にハマった。
タランティーノを一番象徴する映画が、自分的にはやっぱり「パルプフィクション」だと思う。
時系列を入れ替える物語の進行。一発屋曲のフックアップ。サミュエルLジャクソンとユマサーマンの発見。黒いスーツとネクタイ。ユーモアある犯罪者たちの描写。70年代的なオマージュ。ジョントラボルタとブルースウィルスの復活。
数えあげればキリがないです。何よりタランティーノ的なのは、登場人物同士の物語と関係ない会話でしょうか。これは映画史においてかなりの発明でしょう。
そして自分的にタランティーノにハマった理由として、俺たちの世代の映画監督だということです。タランティーノの年齢は私より少し上ですが、今までの映画は与えられてきたものという気持ちが強い。ジャッキーにしろスタローンにしろスピルバーグにしろ。「こういう面白い映画があるから、どうぞ」というような。
しかしタランティーノは自分たちで見つけた感が強い。俺たちが発見したんだ、という。実際はぜんぜんそんなことないんですが、初の世代が近い映画監督なのもあって、そのフレッシュさといったら、もう味わうことはできない感覚です。タランティーノ以降も素晴らしい監督は登場して次々とヒット作品を産んでますし、大好きな映画監督は何人もいますが、タランティーノほど「俺たち」感ある映画監督はいません。タランティーノ自身のそのオタク性なんかもその要因でしょう。「冴えない俺たちの代弁者」的な。「トゥルーロマンス」の主人公はエルビスプレスリーとカンフー映画オタクのレンタルビデオ屋店員で、レンタルビデオ屋の店員だった自分を投影しており、そういう感じがとても親近感を持たせてくれるのもタランティーノの素敵なところでしょう。
で、午前10時の映画祭という企画でリバイバル上映していた「パルプフィクション」を見に行ったわけですが、良かった。30年何度も何度も見返してきた「パルプフィクション」。VHSで、DVDで、配信で。でもそれほど好きな映画を映画館で見たことなかったので、やはり見ておくべきでしょう、と思い、早起きして少し遠い映画館へ鑑賞してきました。
良いよ。全てが。やっぱり「俺たち」の映画でした。きっと死ぬまで好きな映画でしょうね。

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