クェンティン・タランティーノが好きです。
世代なんです。90年代にブレークした映画監督って、デビッド・フィンチャーやリュック・ベッソン、ティム・バートンなんかいるけど、“俺たちの時代の映画監督”といえば、私にとってはダントツで、タランティーノなんです。
『レザボアドッグス』『パルプフィクション』はもちろん良いし大好きです。あの映画にはブルースブラザーズの流れをくむ、“黒スーツ”の伝統が脈々と生きている。アウトローたちに黒スーツ&黒ネクタイ。アウトローではなく、“たち”がついてるところが大切。
葬式や法事とかでもみんなで黒スーツ着ると、「俺たちレザボアドッグスみたいだな」と思ってしまうからね。未だにあのスタイル好きです。普段スーツ着ないけど、着る時はやはりあよ格好にしたい。別名「山岡士郎スタイル」とも言うけど。若い黒スーツに黒ネクタイにしたら、「葬式じゃないんだから、やめろ」と営業先のお客さんに言われたことがありますね。
もう何回見たか覚えてないくらい見てます。好きな本みたいに、適当なシーンから見はじめて、最後まで見て、また最初から見る、みたいなこともしょっちゅうあります。
この映画の素晴らしいところは、いろいろあるんだけど、『パルプフィクション』や『レザボアドッグス』とは別の魅力があります。
この監督のトニー・スコットは、『トップガン』や『ビバリーヒルズコップ』の監督だけに、『パルプ』『レザボア』は閉ざされた空間というか演劇(見たことないけど)っぽい雰囲気なんだけど、『トゥルーロマンス』はちょっと違う。
時間軸も全然違う。
『パルプ』『レザボア』の特徴
時間の流れが前後する
凝った編集ですね。レザボアはまだわかりやすいんです。過去シーンは回想シーンのような編集してるから。
パルプは時間があっちこっちいきます。一番最初のシーンが時間軸でいうと真ん中くらいのシーンだったりします。で、途中のシーンが時間軸でいくと最後だったり。そこが面白いところなんですよね。
世界観はある一定の場所
閉ざされた空間って感じで、場面はあちこち飛ぶけど、結構狭い範囲内ですったもんだしてます。
黒スーツ&ネクタイ!
登場人物が黒スーツと黒ネクタイしてますね。
最高です。これだけで、もう100点あげたいです。
色彩が少ない感じがする
なんかモノトーンな印象。何でですかね? 黒スーツのせい? カメラワークのせい? 意図してるのか無意識なのか知らんけど、色彩的派手さは少ないです。でも、そこがまた良いんですけどね。
主人公が特定されていない
特定の主人公がいない。あるいはわかりづらい。感情移入しにくい人には、それが理由なのかもしれません。
オープニングがカッコいい
これはまた別の機会で、書くと思いますが、オープニングがすごくいいです。もうこのオープニングだけで、200点獲得ですよ。特に『レザボア』のオープニングは、私的映画史上の中でもトップ3に入るカッコよさ。
『トゥルーロマンス』の特長
時間の流れはノーマル
こちらは、クロノロジカルに時間は進んでいきます。
見やすい。王道ですね。前記2作品は数日の話(回想シーンを入れるともっと長くなるけど)だと思うけど、こちらは結構長い時間がたっている。1週間以上の話だと思われます。
場所があちこち移動する
派手目な色彩
デトロイト編はそうでもないけど、ハリウッドに行くとガラリと雰囲気が変わる。
主人公のアロハシャツにオープンカー。恋人の派手な服。ちなみに主人公のクリスチャン・スレイターが来ているオレンジのアロハ、20年以上前に同じ柄の買ってまだ持ってます。
主人公は特定されている
これもオーソドックス。基本的にこの主人公の視点で映画は進む。わかりやすい。
と一見タランティーノ的な魅力が少ないの?って感じになりそうだけど、そんなことはない。
タランティーノ的な魅力って何?ってことになると思うけど、俺の中ではやっぱり“会話”。
その特徴は2パターンあると思ってる。
ストーリーとは関係ない会話
『トゥルーロマンス』でもきっちりやってます。
エルビス・プレスリーやカンフー映画のトリビアや愛情を持って話すシーン。もうエルビスにいたっては、主人公の別人格として登場する。主人公がここの中で葛藤して自分自身と対話をするときのもう1人の自分がエルビスなんです。それで人も殺して麻薬の売買もするわけだから、もう狂人ですよ。
超絶な緊張感あふれる会話
このことが言いたくて、今回ブログ書いてるんです。
『トゥルーロマンス』は他のタランティーノ監督作品と比べても何の遜色もないくらいこの緊張感がすごいシーンがある。大きくは二つ。
ひとつは、主人公のクリスチャン・スレイターがドラッグティーラー兼売春の元締との対決シーン。もうその敵役のゲイリー・オールドマンが怖いのなんのって。チープな怖さがリアルなんだよね。取り巻き含めて、すぐ銃を撃ちそうな感じ。解決方法は暴力。
ゲイリーオールドマンのシマに行く主人公。なんの策もない主人公はすぐピンチなるんだけど、そのピンチになる過程がすごい怖いんです。アメリカに住んでたけど、俺なら絶対にあんなとこには行かん!って思える場所なんだよね。
その異文化空間に入ってしまったという恐怖。なかなかの緊張感ですよ。それをセリフではなく一連の流れて自然にわかるようになってるのがすごいですよ。もう観てるこちら側としては主人公と同じ文化圏なわけで、その時点でこの主人公との共感度が完全にシンクロしちゃうんです。
で、その対決の結末がまたキレキレなんです。
もうね、スカッとするを通り越して、ちょっとひくくらいのテンションなんです。ゲイリー・オールドマンも見事な役者っぷりを見せつけてくれる。
そしてもうひとつの名シーンは、主人公の父親演じるデニス・ホッパーと、マフィアの幹部演じるクリストファー・ウォーケンの対話。
もうとにかく見てください、以上。で済ませたい。
俺的映画史上、トップ5に入る名シーンですよ。息子を追うマフィアたち。それをかばう父親っていう構図なんだけど、そこでは誰も声荒げない。ひたすら静かな会話で話は進むけど、そこに流れるとてつもない緊張感。
もし俺がデニス・ホッパーだったら、この緊張感で息止まってますよ。
デニス・ホッパーは元警官という設定でマフィアには屈しないというタフさがあるわけです。それをある長いセリフで表現するんだけど、もう一言ひとことが、「ちょ、あんた何言ってんのよ、この土壇場で?」って感じで、その場違いな言葉を、静かな笑顔で聞き続けるクリストファー・ウォーケン。さらにそこに流れるクラッシック(オペラ?よくわからん)な音楽。静か。とにかく静か。
もうスタローンやシュワちゃんのドンパチ映画で育った私としては、「うわー! 誰か大声だしてくれー! 誰か銃を乱射してくれー!」って感じになるんです。でも会話。ひたすら会話。そしてクラッシック(オペラ?)。
そしてひたすら怖い静かなクリストファー・ウォーケン。
このシーンだけで、この映画は500点です。
すごいですよ。ホント。たまらんです。
というわけで、『トゥルーロマンス』おすすめです!
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